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バーでのヒトトキ 

最初にその店に行ったのが5年前。
異動や職場が変わってその店からずいぶん足が遠くなっていた。
前回、来た時からゆうに1年は経っている・・・

店の雰囲気が、ずいぶん疲れた様子だった。
そういうことは、バーでなくても、居酒屋でもたとえスーパーでも
直感でわかるもの。そして、そういう直感はだいたい当たるものだ。

久しぶりに来たから、バーテンも僕の顔と名前が
すぐに浮かばないのかもしれない。
客は他に一組。静まりかえった厨房が、そのバーで食事は
出さないことにしたことを暗に示している。

一杯めは、ビールを注文するも、その後は積極的にオーダーもとらない、
バーテンもどことなく、くたびれている。

「昔、ボトル入れたんだけど、ある?」

名前を言うと、ちょっと元気が出たのか、彼は埃のついたボトルを
拭きながら親しげな視線をよこす。

「ずいぶん静かだねぇ・・・」

言うともなく、つぶやくと・・・
ちょっとずつ、お互いの記憶を覚ましつつ、
以前、店内に活気があった様子を話す。

僕は、ここ5年の間に銀行の支店を2つ経験し、その上転職までしている。
彼は、その間動かずにこの店に5年前から変わらずにいる。

今、この店を彼だけで厨房とカウンターを切り盛りしている。
夜がきついのか、愛着がないのか、従業員が長続きしないようだ。
その中でも、彼は辞めずに続けている。18歳から・・・

新しく入ってくるバーテン見習いに仕事を教えても、すぐに辞める。
その上、バーテンの話し方や態度でその店に出入りするお客さんも変わっていく。
僕も、人が言うほどの年ではないけれど、彼の落ち着いた話し方や
間の取り方が、大人の会話を成り立たせる。
ちゃんと話せる人がいるからこそ、そこにまた来ようと思うのが当然だ。

その店の周りにも、バーも増え、チェーン店系の居酒屋もずいぶんと増えた。
そのことについても、お客さんが減って、大変だと彼は言う。

その場所にしかない店は、知らない人は入りにくい。
マニュアルどおりのサービスが欲しい人は、チェーン店に行くがいい。
でも、そこには、人との出会いはない。

僕が、バーというところで、酒を楽しみ、バーテンと会話を
楽しめるようになったのは、その店が最初だ。
そういう店こそ、ずっと残って欲しい。その彼にもいてほしい。


ちなみに、その店にはアイラ島の酒はボウモアしかなかった。

今度、僕がアイラ島に行くことを話すと、彼はうらやましそうに、
ウィスキーガイドの地図を持ってきた。

「そう、ここがアイラ島だ」

僕は指をさした。


なぜだか、僕だけでその島に行くのではない気がした。
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